RevitからLumionへ

昨年Lumionを購入した。それまではプレゼン用のレンダリングも含めRevit内ですべて作業していたが、重宝していたMental rayが使えなくなり、Vrayを入れたりしたが、ようやくLumionに行き着いた。BIMを始めた時点で早々にLumionを導入していれば良かったというのが率直な感想である。国内外を問わず、建築設計事務所での採用率が高いのもうなずける。

Lumion

Lumionは「リアルタイムレンダリング」と言って、ゲーム開発やVRコンテンツなどの作成のプラットフォームとして使用されるUnityやUNREALなどと同様のシステムのソフトである。リアルタイムというくらいなのでレンダリング時間がとても早く、したがって動画も手軽に作成できる。一昔前は、建築の世界ではほぼレイトレーシングレンダリングだけに頼っており、アーキテクトは施主やプロポーザル等へのプレゼンでリアルな勝負パースを作成したいときは、「CG家さん」に外注せざるを得なかった。フォトリアルなレンダリングを作成することができるソフトの代表格に3dsMaxがあるが、アーキテクトが直観的に使えるような簡単なソフトではなく、たとえマスターしたとしても入力に時間がとられるので、建築家が設計をしながら3dsMaxで絵を描くのはなかなかハードルが高い。また、3dsMaxのレイトレーシングはとてもきれいだが(映画などCGのプロが使うソフト)、その分レンダリングに時間がかかる。筆者が20年程前働いていたNYのヴィニョーリ事務所では、Maxを使いこなすインハウスの若いレンダリングチームがいて、コンペの前になると、事務所中の40~50台のコンピューターを稼働させネットワークレンダリングをかけて動画を作成していた。もはやBIMやVRが標準になった若い世代には想像つかない話である。さて今日のBIM時代のアーキテクトは、最初からリアルタイムレンダリングを使えば、プレゼン作業がかなり効率化できる。特にLumionは建築用のレンダリングや動画作成のみに特化してる。基本的にモデリング機能は付加せずに、Revit、ArchiCAD、Sketchup、Rhinocerosなどアーキテクトに広く使用されているBIMや3DCADとのすべてのソフトとの互換性の高さで勝負しているソフトである。もちろんVRソフトなのでゲームコントローラーやヘッドマウントディスプレイでヴァーチャル内覧会ができるわけである。

[Fig01] Lumionと同期させるRevitのモデル

Revit Lumion LiveSync

さて、そんなLumionを買っては見たものの、最初のうちはデータのやり取りのやり方が分からず、半年くらいは「宝の持ち腐れ」だった。もったいないのでネットで勉強した所、データのやり取りはとても簡易で、その互換性もほぼ完璧であり、RevitとLumionを「インタラクティブ」に使用できるということが分かった。えらく前置きが長くなってしまったが、ここで「インタラクティブ」であるとことをさっそくデモしたい。

[Fig02] Lumion LiveSyncのアドインの画面

まず、RevitとLumionを連携させるためには、Revitに「Lumion LiveSync」というアドインをインストールする[Fig02]。アドインはAutodeskのAppStoreから無料でダウンロードできる。軽いのですぐダウンロードでき簡単に組み込める。

[Fig03] Lumion とRevitの画面

次にLumionを開く。上のようにダブルスクリーンで左右で表示させると便利である[Fig03]。

[Fig04] Lumion LiveSyncの同期操作

RevitのLiveSyncの操作は極めてシンプルである。[Fig04] ライブシンクというくらいなので、Revitの3DビューとLumionを同期させることができる。再生ボタンを押すと、LiveSyncがON(緑色)になる。すると、Lumionの中にRevitモデルが表れる

[Fig05] Lumion に何も出てこない!

はずなのだが、何も出てこない![Fig05]  よく見ると地面が暗くなっている。実はRevitで地面の高さを標高通りに作成しているため、Lumion上で約100Mの高さにモデルが浮いており、大きな影が落ちているのである。※特に何も設定しなければRevitの基準点(0,0,0)がLumionの基準点(0,0,0)に対応している

[Fig06] ようやく宙に浮いているモデルが表れた!

実はそのことに気づくまで相当時間がかかったのだが、我慢強く視点を後ろにグーっと引いていき、宙に浮いているモデルをようやく発見することができた[Fig06] 。宙に浮いたまま作業するのも気持ち悪いので、Lumionの地面の近くに移動させると、Lumionの地面にRevitのモデルが表れる。※Lumionで数値入力で移動させると手っ取り早い[Fig07]

[Fig07] Lumionの地盤面近くにモデルを移動

Revitのモデルと比較すると、下図[Fig08] のような結果となる。Revitの木や人は同期してない。(そもそも木や人などの点景はLumionに良いライブラリーが揃っているので必要ない。)Revitのテクスチャーは基本的にすべて入る。ここではガラスも透明な状態で入っているし、水もしっかり表現されている。ガラスなどがうまく入っていない時は、Lumion上でRevitのマテリアルごとにテクスチャーを一括で変更できるようになっているので、ガラスを透明度や反射度を上げたり、色をつけたり、すりガラスにしたりなどインスタントに入力できる。Lumionで一度マテリアルなどを変更すると、その設定は保存される。※注意点を後に示す

[Fig08] 同期結果(Revitの木と人は同期されない)

さて屋根が真っ白だが、Revitのテクスチャーマップを外部参照していたりすると、こういう事態が発生する。Revitに戻ってテクスチャーイメージを再設定するとLumionにすぐに同期する。このようにRevitで作業するとLumionに自動的に同期されるのである。もちろん、テクスチャーだけでなくRevitで窓を大きくしたりすれば、Lumionに不整合なく反映される。繰り返すと、RevitとLumionで「インタラクティブ」に設計できるということである。

※PCのスペックが低いとLiveSyncをかけたままでRevitとLumionを同時作業すると、動作が非常に遅くなるので、そういう場合はRevitでの最新の状態を確認したいとき以外はLiveSyncを切っておくと良い。

[Fig09] Revitでマテリアルを割り当てると、その修正が自動的にLumionに同期する

ここで注意したいのは、Revitのすべての3Dモデルと同期するので、例えば[Fig10] のような断面パースのビューがアクティブな時に、意図的にせよそうでないにせよ、LiveSyncの再生ボタンを押すと、Lumionに断面パースのビューが同期するということである。Lumionの中で表示させたくないRevitの家具や車などはRevitの3Dビュー内で非表示にして同期させるのだが、同期させる3Dビューを間違えるとその設定がすべて元に戻ってしまうので注意ということである。この点も最初のうちは、知らずに作業し何度と失敗したことか。。

[Fig10] Revitモデルとの同期はすべての3Dビュー対して有効

[Fig11] Lumionで3Dの木と人を入れたもの

上はLumionで3Dの木と人を入れたもの。さまざまなアセットが用意されているので、選ぶのも大変である。地面の芝なども3Dの草むらの表現ができるのだが、筆者のPCでは重たくなりすぎるのであきらめている。この画面はあくまでLumionの基本画面で、ここからレンダリングをかけるとよりリアリティのあるレンダリングが出力できる。事務所のミドルスペックのPCでも、2Dのパースは大きいものでも1分程度(レイトレーシングでは2~3時間)で、Youtubeにアップロードするような1,280 x 720ピクセル3分程度の動画なら1.5時間くらいで出力できる。おかげで夜中にレンダリングを始め、朝にミスに気付いて提出に間に合わなくなるなんて悪夢から解放された。リアルタイムレンダリングさまさまである。

2020.10.21 HN

レイトレーシング系のレンダリングエンジンはもう不要ということではありません。例えばVrayはRevitのエクステンションとして直接組み込むことができ、さらにVray Nextにバージョンアップされたので、Revitの中でさらにきれいな絵が出力できるようになってきている。3dsMax, Vrayなどのレイトレーシング系のソフトで、とことんフォトリアルなレンダリングを追及するか、Lumionのようなリアルタイムレンダラーで手早く効率的なプレゼンを追及するか、プレゼンのオプションが増えたということです。

2020.11.11 HN

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA