建築で街をつくる Make City by Architecture
千葉県習志野市津田沼にツインタワーが完成した。コロナ禍の2021年に計画が始まった。10階建約30mの店舗併用共同住宅で、タワーと呼ぶには少々おおげさだが。限られた敷地において、商業プログラムのポディウム(基壇)の上にスリムな塔状のボリュームが座した構成となっている。共同住宅の提案とともに、1~2階の事務所/店舗によりメインストリートへの賑わいをつくることがテーマとなった。下 [図1] の左がウエストテラス、右がイーストテラス、それぞれ1期と2期の順に段階的に計画と建設が進んだ。互いの施主は異なるが、姉妹建築としてファサードに統一感と個性を表現した。

[図1] 左右順にウエストテラスとイーストテラス。ポディウムは黒タイルで合わせ、タワーは表情を対比させ、街並みに統一性と多様性が調和するよう努めた。
ミクストユースMixed Use
共同住宅のみの単一用途の街ではなく、小売り店舗や事務所などローカルビジネスの受け皿となるようなプログラムが複合した都市建築に携わる機会を得たことは貴重な経験となった。住宅タワーの店舗基壇が、昔からの商店街の街並みの連続性を維持する根幹となる。住宅へのアプローチとなる駐車場となる空地は、ポディウムの裏に配置しているが、このバックヤードの手法は、商業メインストリートの明確なエッジの保全につながる。(日影規制により、ボリュームは必然的に南の通り側に寄せられるのだが。)居住、業務、文化、余暇などのさまざまな用途がモザイク状に織りなすことにより、生き生きとした人間的な都市が育まれるのである

[図2] 南東交差点からの眺め、手前がイーストテラス、奥がウエストテラス
アンカーテナントAnchor Tenant
ミクストユースは賑わいのある街づくりの第一条件であるが、単にスペースだけを用意しても良い店子を集めるのは難しい現実がある。したがって都市開発プロジェクトにとって、計画の初期段階から目玉となるテナントを青田買いすることは、事業成功の鍵となる。アンカーとは、船を桟橋に固定する錨(いかり)のことだが、プロジェクトをしっかりとした錨でつなぎとめるテナントということであろう。本プロジェクトでは、もともと2期のイーストテラスの敷地で営業していた銀行が、ウエストテラスの1階に移転することとなり、開発の大きな推進力となった。さらに本プロジェクトを主導した1期の施主の不動産会社と、2期の施主の病院の経営するレストランが互いの土地を交換して入居する契約があった。つまりオーナーたち自らが熱意と強力な意思を持ってプロジェクトが牽引されたのである。

[図3] ウエストテラス南西角からの眺め、アンカーテナントの銀行とオーナーの不動産会社が入る。奥がイーストテラス。
ストリートアメニティ Street Amenity
前面道路は駅と市役所を結ぶ市民のプロムナードである。ペデストリアンが自由に気軽に店に立ち寄り、休憩できるような”仕掛け”を用意した。ウエストタワーの南西の交差点の角には、円屋根の“アンブレラ”をさした“スパイラル”(螺旋階段)を配し、2階の商業テラスに誘導する[図5]。スパイラルの同心円の基壇はシンボルツリーや通りを眺める為のベンチでもある[図4]。

[図4] [図5]ウエストテラスのアンブレラとスパイラル
一方イーストテラスでは、ガラス屋根を被せたアプローチ階段と基壇ベンチを設け、歩道とテラスとの連続性を高めた。さらに壁面にはモザイクタイルの壁画を掲げ、パブリックアートとして通りに色彩を加えた[図6]。

[図6]イーストテラス、ポディウムの表情。アプローチ階段とモザイクタイルのパブリックアート。2階には施主の経営するレストランが入る。
グリーンコリドー Green Corridor
イーストテラスの敷地の東側隣地は、菊田川暗渠の旧河川敷で市が所有する認定外道路となっており、緑豊かな散策路、海と内陸をつなぐ地域の貴重な緑の回廊(グリーンコリドー)となっている。敷地のすぐ横にケヤキの大木があるが、敷地内に大きく枝が張り出していたが、施主の希望も助けとなり、敷地側に伸びる太い枝を大きく剪定することにより、根本伐採を回避した。2階のレストランは緑道に広く窓を設け、命をつないだケヤキとともに、緑を最大限に取り込んだスペースとした[図7]。またストリートアメニティとして、散歩中に一息とったり弁当を食べたりできる秘密のベンチを用意している。敷地内の閉じた外構植栽デザインではなく、周辺環境の自然と調和するランドスケープデザインを目指した。

[図7]イーストテラス、緑道からの眺め。ケヤキの後ろにベンチが隠されている。
ミドルスケールの都市デザイン Medium-Scale Urban Design
都心では、あちらこちらで大規模再開発が行われ、今日でも街の風景は激変し続けている。スター建築家たちが競ってデザインしたきらびやかなタワーや商業モールは、オープン当初は祭りのように人々であふれかえるが、10年20年後に同じような集客力を維持する保証はない。 その“太っちょ”の建物の“馬鹿でかい”テナント空間はグローバル大企業専用の器であり、地域に根差した中小規模のローカルビジネスの受け皿にはなり得ない。 “タワマン”に代表される巨大化した都心部のマンションも、ほとんど投資対象に陥り、ますます人々の手から離れていく。図らずも与えられた大きさであるが、今回のプロジェクトのスケールは、地域経済やコミュニティを維持し共存することが可能な適正規模なのではなかろうか。ミドルスケールの都市デザイン、つまり地域社会のステークホルダーたちによる主体的な街づくりが、人間都市の再生につながると信じている。

[図8]イーストテラス遠景、市役所広場からの眺め。
2026.05.11 HN