最新グラボRTXの威力

NVIDIA GeForce RTX

先日ノートパソコンを購入した。8年選手のノートパソコン(以下M君)はまだまだ元気なのだが、最近ノートPCを持ち歩く機会が多くなったことや、モバイルPCでもBIMやVRソフトをバリバリ動かすことの出来るグラボを搭載した高スペックノートを見つけて思わずポチっとしまった。そろそろOSのアップデートも考えなければならないタイミングでもある。最初に結論を言うと、良い買い物ができたと思う。


[写真1]MSI Prestige-14 (P君)
3DCGがサクサク動く。難点は、計算をがんばり出すと少々うるさいこと。こればかりは構造上どうしようもない。出先でファンが回り出したら「グラボが一所懸命計算しているところです」とエクスキューズする必要有るかも。メールやweb程度の通常作業なら基本的に回らないのであまり心配せずに。

 

グラボ、グラフィックボード、グラフィックカード、グラフィックス、GPU(Graphics Processing Unit)と様々な呼び方があるが、グラボと言えば、ゲームの世界の高スペックなパソコンが第一に思い浮かぶ。キャラクターがかくかく動いているようでは、ボスキャラに太刀打ちできないというわけ。もちろん、我々の建築の分野を含め、ゲームや映画制作や様々なクリエーターの為の3DCGソフトや、昨今では金融の世界のAIソフトなど、多岐に及んだ領域で、高性能なGPUの画像処理性能が不可欠になってきている。システムは良く分からないが、CPUだけの性能に頼るのではなく、両者のタッグによって全体的な演算能力が向上するということらしい。筆者が所有する10年選手のB社のデスクトップワークステーション(以下D君)にGeForce GTX 750 Ti 2GBを据え付けた。当時はネットで2~3万円程度で購入できた。最新のGeForce RTXシリーズは最低でも7万円くらい。性能の向上以上に、需要過多による供給不足の為の価格の高止まりと考えられる。メタバースでますますグラボ獲得競争だ。

 

一方、D君の少し年下のノートパソコンM君も、モバイルワークステーションと呼ばれるラップトップで、Core™ i7-5600U、AMD FirePro M4150、PCIe-SSD と悪く無い。例えばREVITの標準的作業には基本OK。けれどもSSDの容量が256GBしか無いのが悩みの種であった。当時はPCIeのSSDなど高嶺の花。またストレージに余裕があったとしても、GPUの性能を考えるとLUMIONをインストールするのはちょっと無理がある。


[写真2] M君、8年選手。PCIe-SSDストレージのモバイルワークステーション

 

そこで今回の買い替えの目的は2つ。『①ノートPCでRTXグラボ』、『②ポータブルな14インチゲーマーの使うモバイルWSはデカいのが多いが(15インチ以上が標準的)、M君と同じ14インチに絞る。これ以上小さい画面だと、BIM/CAD作業が困難。もちろんRTX内蔵のノートPCは価格が跳ね上がる。M君を22~23万で買ったので、可能ならば同程度の金額で購入したい。円安の状況で難しいかなと思いながらも、RTXを載せたノートPCの品ぞろえが豊富でさらにコストパフォーマンスの良いMSIを見つける。MSIはゲーミングPCを得意とした台湾のメーカー。今や台湾は半導体の巨大生産拠点。他社の製品も色々迷ったが、探していた「RTX」「14インチ」「Windows 11 pro」 の条件が揃ったMSI Prestige-14に軍配が上がった。P君と命名。


MSI公式オンラインショップの製品写真より
[写真2] MSI Prestige-14
ゲーマー&クリエーター向けの製品を主体としたMSIのラインアップの中でも、ビジネス用途をうたったコンパクトなハイスペックモバイル。スペック的にはゲーマー&クリエーター向けの製品と変わらない。公式ページから直接購入可。

< M君> 8年選手 < P君> ルーキー
ディスプレイ 14インチ 14インチ
寸法 339 × 237 × 21mm 319×219×15.9mm
重量 約1.7kg 1.29kg
CPU Core™ i7-5600U Core i7-1280P
SSD 256GB 1TB
RAM 8GB 32GB

[表1] モバイルワークステーション新旧比較

 

ということで、M君とP君の能力の差は説明するまでも無い。ただしこの薄さと軽さのトレードオフはどこにあるかというと、拡張/接続性にある。旧世代のM君には親切にUSBやディスプレイなどの拡張端子が豊富に装備されていた。一方、P君にはThunderbolt 4 Type-Cというオジサンには見慣れない小さな端子が2つ、USB端子は1つしかない。なのでM君の使い方と同じように、拡張ディスプレイやLANに接続するためには、専用の変換ハブが必要となる。MacBook やSurfaceなどの今日日のスタイリッシュなラップトップを買うと、ドッキングステーションという様々な変換ハブを購入する羽目になるというわけ。筆者はLANとDVIをつなぐためのDST-C10というエレコムの製品を5000円で購入。ドッキングステーションも機能を欲張り過ぎると、軽く1万を超えてしまう。箱を開けてLANや外部モニタが接続できるかドキドキだったが、問題なく機能。最新のThunderbolt 4は互換性が高く、速度も極めて高いとのこと。Thunderbolt 4端子の外付SSDなどは非常に高速な転送能力があるらしい。ちなみにバッテリーの接続もThunderbolt 4端子が担う。なんでも接続できるので「万能端子」と呼ぶらしい。


[写真3] ドッキングステーション(エレコム、DST-C10BK)

GPUの新旧対決、GTX vs RTX

事務所に鎮座する10年選手のWS、D君と比べても、今回購入したP君は最新グラボGeForce RTX 3050の威力で、BIMやVRソフトを動かす性能が格段に向上した。


[写真4] 10年選手D君。机の下で埃を被っているが、Core-i7の搭載のデスクトップワークステーション。GeForce GTX 750 Ti 2GBを実装したおかげで電源ユニットも交換する羽目になった。

 

調子に乗って家具ファミリを入れ過ぎてしまい、コンペ提出前に急に動きが悪くなり苦戦したBIMモデル。ルーキーP君で開くとサクサク動く。試しに7680×4320のポスターサイズでD君(デスクトップ)とP君でレンダリング速度を比較してみると、以下のような結果となった。


[写真5] レンダリング時間比較、解像度7680×4320

< D君>10年選手WS < P君>ルーキーモバイルWS
CPU Core(TM) i7-4770 CPU @ 3.40GHz 第4世代 Core i7-1280P @ 4.80 GHz 第12世代
SSD SATA SSD 500GB PCIe SSD 1TB
RAM 16GB 32GB
GPU GeForce GTX 750 Ti 2GB Geforce RTX 3050 Laptop 4GB
レンダリング時間 10分35秒 36秒

[表2] レンダリング速度、新旧比較

 

ということで、P君の圧倒的な勝利。ネットのベンチマークの情報によれば、Core-i7のCPUは第4世代も第12世代もそれほど大差は無さそうで、D君のRAMやビデオメモリの不足の問題や、SATA-SSDとPCIe-SSDの転送速度の差も少なくないが、このレンダリング時間の差の最も大きな要因は、グラボの演算能力の差と予想する。BIMやVRソフトだけでなく、2D-CADの描画能力の高さも極めて良い。外部参照を使いまくる筆者には、CADの作業性の大幅向上にも大満足。もう”デスクトップ”ワークステーションは要らなくなる?

建築デザイナーの皆さん、PCの買い替えには、ぜひグラボの良いものを選んでくださいね。

★追記 230412
最近、Lumion 9 から、永久ライセンスの最終版のLumion 12にバージョンアップしたのですが、< P君>のLumion 12のベンチマークは37%まで大きく下がってしまいました。GPU“Geforce RTX 3050 Laptop 4GB”が“最小”評価の為です。特にGPUメモリは6GB以上が要求されています。高解像度の4Kなどで、バリバリにVRソフトを動かしたい“強者”は、GPUをもう一段性能の良いWSを検討ください。

HN

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