最新グラボRTXの威力2

NVIDIA GeForce RTX3060

前回のブログで紹介したRTXが搭載されたノートPC<P君>の性能が格段に向上したおかげで、事務所の机の下に鎮座しているデスクトップ<D君>では仕事にならなくなってきてしまった。筆者は2DCADも外部参照をバリバリ活用するので、このグラフィックの差が大きい。いったん早い<P君>で描いた図面を<D君>上で作業すると、<P君>では要ら無い描画時間を我慢しなければならない。フリーズしているわけではないが、5秒とか10秒とか多い時は30秒などと我慢を強いられる。レンダリングのように最初から時間がかかると分かっているものは、いったん作業を止めてネットしたりして待てば良いが、CADの描画作業の度に中途半端なポーズが頻繁に発生すると極端に作業効率が下がる。ということで近い将来に買い替えを検討していた10年選手<D君>のグラボをハイスペックのRTXに「つなぎ」で交換することにした。近々Windows10のサポートが終わるので、新しく買い替えてからと考えていたが、目の前の仕事を乗り切るための必要経費である。<D君>を買い替えた時にGPUを引っ越せば良い。アマゾンでRTX3060 (VRAM 12GB) が5万を切っており、もはや買い時である【写真01】。


【写真01】MSI GeForce RTX 3060 VENTUS 2X 12G OC GPU VD7553 アマゾンより

交換前のグラボはGeforce GTX750Ti (VRAM 2GB)で当時2万弱で購入した【写真02】。価格は倍だが、性能の差は倍倍倍。取り外したGTXはだいぶ埃をかぶっているが、10年故障も無く計算し続けてくれました。お疲れ様でした。


【写真02】Geforce GTX750Ti (VRAM 2GB)

GPU補助電源

しかしRTX3060を開封すると補助電源が必要なことが判明【写真03】。


【写真03】8ピンの補助電源コネクタ

シングルファンのGTXは補助電源が無かったのだが、さすがにデュアルファンともなるとマザーボードからの供給電源だけではパワー不足ということ。しかし<D君>を開けてもどこにも8ピンのコネクタケーブルは見当たらない。余っているのはハードドライブ用のSATAケーブルのみであった【写真04】。


【写真04】SATA補助電源メスコネクタ

SATAから8ピン

そこでGPU用補助電源変換ケーブルが必要となる。10年前にGTXに交換し、PCが直ぐに落ちるようになってしまったので、アキバの自作パソコンショップのお兄さんに相談した所「電源ユニットを交換する必要があるよ」とアドバイスされ、指示通りの製品を購入し交換したおかげで、電源そのものはまだ余裕があるはず、あとはSATAを8ピンに変換するコネクタがあれば大丈夫と踏む。で「SATAから8ピン」でググると簡単に発見できる。<D君>のSATAの予備は、SSDを付けて、今ではほとんど使っていない遅くて役立たずだった3.5インチのハードディスクの電源を抜けば、2つ余っているので、念のためシングルタイプではなく、デュアルで電源を送るタイプのものを付けることにした【写真05】。


【写真05】15ピンSATAオス→8ピンメスPCI-E PCI Express 電源アダプタケーブル ブランド:Fosa アマゾンより

ぎゅうぎゅうづめ

さあ、いよいよ交換作業である。MicroATXマザボのミニタワーの箱は、シングルファンのGTXを挿してもスカスカであったが【写真07】、一方デュアルファンのグラボは倍でかい【写真06】。シングルファンのRTX3060もあるが価格が少し上がるし、普及している製品を選んだ方が無難であろう。


【写真06】左GTX750Ti 右RTX3060


【写真07】補助電源の必要の無いシングルファンの小型グラボ

RAMのソケットの爪や、その他ケーブル類への干渉を気にしながらのヒヤヒヤの取り付け作業。なんとかいったん取り付けたが、ケーブルが下に挟まっているので、もう一度付け直したりしながら、なんとかグサッとPCI Express x16コネクターにデュアルファンのグラボを挿し込む【写真08】。「おっかなびっくり」の初心者は緩くつけて、もう一度箱を開け挿し直しすることになる。(もちろん壊さない程度に)思い切ってしっかりスロットに挿し切ることが大切。またスロットが横に長いので真っすぐ付けないとサイドが浮いてしまうのでその点も注意くださいね。拡張スロットのカバーを固定するラッチは、カッコ良いがちょっと大きいブラックの保護ジャケットの角に引っかかってしまい、カチッと閉まらないが、PCIスロットにはちゃんと挿さって固定されているので、普通に使っていればまず外れることはない。ちょっと気持ち悪いが、まあ良しとしましょう。


【写真08】

ここまでできれば一安心。後は前述の補助電源ケーブルを接続するだけ。デュアルなのでSATA2本をグラボの8ピンに接続【写真09】。


【写真09】グラボの8ピンにSATA電源をダブルで接続

DVIからDisplayPort

10年選手のGTXのディスプレイ端子はDVI。(正確にはデュアルリンクDVIが2つ、Mini-HDMIが1つ)。いっぽうRTXの端子はDisplayPortとHDMIであり、もはやDVIなど見当たらない。またRTXのディスプレイ端子の数は、DisplayPortが3つ、HDMIが1つなので、クアッドモニタも可能【写真10】。4つも並べるとまるで投資家のパソコンみたい。当時少々奮発して購入した事務所の液晶ディスプレイはDELLの27インチ(Dell-U2713HM)。ちょっと前のモデルだが、インターフェースはDVI、VGA、HDMI、DisplayPortまでフルスペックなのでどんなグラボを付けても大丈夫。


【写真10】RTXのディスプレイ端子。DisplayPortが3つ、HDMIが1つ。埃が被らないように、使わない端子はカバーをつけたままにしておこう。

新しく購入したDisplayPortケーブルをDell-U2713HMに接続し、いよいよ<D君>を起動。あれ、、、画面が真っ暗である。。グラボがうまく作動していないかと、冷や汗をかきながら、もう一度<D君>を起動すると、起動音はするがやはり画面が真っ暗。。。 あ、モニタ画面を見るとDVI接続が無いと警告している。そこでモニタ前面の操作ボタンを押すと、インプットを切り替えることができるようになっていた。もちろんタッチパネルじゃないので、画面を触っても反応しないので、ボタンを押す。DVIからDisplayPortに切り替えることができた!【写真11】


【写真11】モニタのフロントボタンでインプットの切替

このモニタの設定を完了すると、、、ついに画面が表示されました【写真12】。良かった良かった。


【写真12】

試しにLumionを起動すると、自動的にベンチマークが実行されて、ギリギリだった評価値がほとんど振り切れました【写真13】。ということでカクカク動いていた大きくて重たいプロジェクトもスムースに動くように。10年前のパソコンでもCPUは十分性能良いんです。


【写真13】Lumion9.5のベンチマーク画面

そして、入れ子入れ子の外部参照で大きくなり過ぎたDWGデータの描画も、ごっつ早くなったとさ。

さあ明日から本格的にバリバリ図面描きましょう!

230629 HN

追記:AutoCADの再描画の設定はデフォルトでは自動になっているので、大きなファイルで困っている場合は、切っておく(REGENMODEを1から0に)と良いそうです。もちろん表示の確認には自分でREGENする必要がありますけど。

Revitはアメリカ人, インチとメートル

インチ系とメートル系

アメリカでは長さの単位はメートル系でなく、フィート-インチ系(feet-inch)である。1 inchは  25.4 mmで、1 feet = 12 inch = 304.8mm である。ご承知のように、日本を含め現在では世界中のほとんどでメートルを使用しているので、初めてアメリカの設計事務所で仕事をやり始めた頃は、慣れない12進法の単位と縮尺のシステムに苦戦したものである。

フィート-インチ系 表記法 メートル系
1 inch 1” 25.4 mm
1 feet = 12 inch 1’ – 0” 304.8 mm

メートルは10進法なので、縮尺はシンプルに1/50、1/100、1/200などと分かりやすいが、インチ系での縮尺は以下のように十進法に変換すると端数が出てくるので、メートル系の物差しやサンスケ(三角スケール)は使えない。ただし1/8” = 1’ – 0”などは1/100のスケールで代用できたりする。

インチ系縮尺例 スケールファクター デシマル
1/32” = 1’ – 0” 1 / 384 0.0026041666
1/16” = 1’ – 0” 1 / 192 0.0520833333
3/32” = 1’ – 0” 3 / 384 0.078125
1/8” = 1’ – 0” 1 / 96 0.0104166666
1/4” = 1’ – 0” 1 / 48 0.0208333333

始めは手すりの高さ3′-6″は1,066mmなどと、いちいちメートル換算して理解していた。まるで英語を使うのに、いったん日本語で考えてから英語に翻訳する(ぼくのような)典型的な日本人のようである。慣れてくると、インチ系の建物の方が3’、6’、12’、15’などとシンプルかつ身体スケールに即した寸法体系を持っていることを認識できる。例えば背の高いアメリカの男性の平均身長は6’、歩道の幅は12’などと分かり易い。逆に「チリ3mm(約1/8″)」などと言うとそんなに微細な寸法はアメリカの建設現場では無意味(制御不能)とボスに笑われてしまう。メートル系はサイエンティフィックでメカニカルであり、インチ系はヒューマンである。日本でも尺が使われていたが、人間的な寸法体系であることは言うまでもない。一間(6尺)は1.81818mなので、6フィート(1.8288m)とほぼ同じ寸法ある。

補足:日本の場合、畳や襖のモジュールは柱や梁の内法でとるので、畳の大きさは、地域によるが、6尺ない。江戸間の大きさは、5 尺8 寸(176cm)×2 尺9 寸(88cm)。

AutoCADの単位(Unit)の仕組み

さて、話を戻す。アイフォンもまだ世に出ていない20年以上前は、もちろんBIMなどなくAutoCADで設計していた。AutoCADの単位(Unit)は、インチ系とメートル系の互換性が無い。分かり易く例えると、米国のAutoCADの図面と、日本で使うAutoCADの図面はまさしく世界が異なる。以下にAutoCADでの実際の操作によって説明する。AutoCADにはインチ系のテンプレート「Tutorial-iArch.dwt」などが入っているので、それを使うと便利。[図1]のように27フィート角の平面を作図する。27’は8,229.6mmである。

[図1]インチ単位系でのCAD図

次にそのインチ単位のデータをコピーし、メートル単位のモデルスペースにペーストすると、27′-0″の寸法が、324となる。すなわち27 x 12 = 324 で、27′-0″角の平面が、324mm角の平面に縮小されてしまったということ。これをメートルの世界に変換するためには、1 inch = 25.4 mm なので25.4倍する必要がある。

追記:初めてインチ系の環境でCADを使う時のよくある間違いは、モデルスペースでインチユニットで作図し、ペーパースペースで印刷するときに、インチ系の図面をA3(420mm x 297 mm) などのメートル系のペーパースペースにレイアウトするとスケールが合わない。A3(420mm x 297 mm) は A3(16.5354″ x 11.6929″)であることを忘れているのである。

[図2] 左のインチ単位系のCADデータを、右のメートル単位系にコピーしたもの

Revitの単位(Unit)の仕組み

一方、Revitの場合は異なるシステムを持つ。当然日本語版のRevitは初期設定では単位はメートル系である。しかし、AutoCADと違ってメートルとインチのデータの長さは絶対寸法を持っている。

上のAutoCADと同様の操作で理解してみよう。日本語版のRevitの基本テンプレートはメートル単位だが、インストール時のライブラリにインチ単位のものも入っている。「Default_I_ENU.rte」 [図3] を使う。IはImperialのI。インチシステムの日本語の名称は「帝国単位」と少々威圧的である。

[図3] インチ系のテンプレート「Default_I_ENU.rte」

このテンプレートで、27’角の箱をつくる。フィート単位のプロジェクトの中にいるので、27と入力すれば自動的に27’となる。寸法を入れて確認する。[図4]

[図4] インチ系テンプレートでの作図

次に通常のメートル系のテンプレートを開き、[図4]のモデルをコピーしてメートル系の白紙のモデルにペーストする。するとこの場合は、寸法は8230となっている[図5]。すなわち27’角の箱が8,229.6mm(27 x 12 x 25.4)角の箱としてコピーされたということを示す。

[図5] 左:インチのモデル 右:メートルテンプレートにコピペしたもの

Revitはアメリカ人

ここからが本題である。すなわち、RevitのUnitは絶対的な長さのプロパティを持っているということである。「Revitはアメリカ人」とは、ファミリだのプロファイルだのインプレイスなど訳の分からないカタカナ満載の日本語版Revitのインターフェースを指しているいるのではなく(そういう皮肉もこめているが)、ここでは「メートル系のテンプレートの中でインチ入力できる」ということである。

インチ寸法の作成

まずインチ対応の寸法タイプを作成する。寸法スタイルの一つをコピーして名前をフィートなどの名前を付けて別タイプとする。単位書式がmmになっているので、この単位を変更する[図6]。

[図6] 長さ寸法のプロパティ画面

すると以下のような設定画面となる。ここで「プロジェクト設定を使用」のチェックをオフにすると、単位をフィートインチ変更できる。「フィートと分数表記インチ」とする。[図7]。すなわち、デフォルトではプロジェクトの単位系はmmということ。

[図7] 寸法単位の変更

これで準備完了。この寸法タイプで先ほどの箱を測ると、27′-0″の寸法を記入できる。[図8]

[図8] インチ寸法の入力

インチ入力での通り芯の作成

さらにメートルのユニットの世界で、インチ入力で通り芯を作成する。まず27’を三等分し9′-0″の通り芯を入力する。プロジェクトの単位設定がメートルなので通り芯をコピーしようとすると、2000などのようにmmの青い作図寸法が出てくるが[図9]、無視し、「9’」と数値入力をする[図10] 。フィートの記号「’」は「シングルクォーテーション」という。すると9′-0″のスパンで通り芯を入力できるのである。長年そのことに気が付かなかった筆者は、これを知った時は、「なるほどRevitはアメリカ生まれなんだ」と感慨深く(?)妙に納得したものである。

[図9] コピーによる通り芯入力

[図10] フィートの数値入力「9’」

インチは「”」「ダブルクオーテーション」を付ければ良い。たとえば4′-6″「4’6″」と入力する。この場合6″はちょうど半分なので「4.5’」でも良い。このようにRevitではメートルの世界でも、バイリンガルにインチの世界が使えるようになっているのである。ちなみにAutoCADのメートル単位系の中で「4’6″」と入力しても単位として認識することはできないので試してみてください。

[図11] Revitではメートルもインチもバイリンガルに入力できる。

HN 2021.01